国道411号線  −その3−


 奥多摩駅を過ぎると、ゆるやかな登りとなる。ところどころに、軽便鉄道の跡がある。小河内ダムを建設する際に設置されたもので、鉄橋なども、ちゃんと残っている。現在、この区間に鉄道が復活できないか、真剣に検討されている。奥多摩駅から小河内ダムまでのあいだは、紅葉などのシーズン中は、ひどく渋滞する。そのため、かつてここを走っていた鉄道を、ふたたび活用できないかという案である。
 用地買収の手間はかからないけれど、路盤をつくりなおさなければならないから、それなりの費用はかかる。採算が合うとは思えないけれど、自然保護の観点からみると、たぶん、いいことなのだろうと思う。

注)シーズン中は、奥多摩駅周辺から小河内ダムまで、ひどく渋滞する。これを避けるためには、五日市、もしくは上野原から、都道206号線(旧奥多摩有料道路。現在は無料となっている)を通って、奥多摩に入る方が無難だと思われる。


 小河内(おごうち)ダムは、1957年に完成した重力式のダムだ。ダム湖の水は、わりときれいである。この水は、多摩川を流れて、羽村(はむら)の堰から、村山貯水池(多摩湖)、狭山貯水池(狭山湖)に運ばれ、東京都民の水道水となる。
 東京では、この多摩川水系と、利根川水系の水が、水道水として使われている。おおざっぱに言うと、多摩川水系の水は美味しくて、利根川水系の水は、あまり美味くない。私は、東京都東部から、現在の立川に引っ越してきたとき、水が美味しいので驚いた。以来、わが家では、浄水器など、買ったことはない。

注)ちなみに、神奈川県では多摩川の水は使っておらず、相模川水系の水が使われている。道志川(どうしがわ)の水は、そのままでも飲めるほどだし、相模川流域は、湧き水も豊富である。神奈川県の人は、あまり水のことで悩んだことなどないだろうと思われる。


 小河内ダムの頂上より下流を見ると、足がすくみそうになるほど高い。高さは147メートルということだが、もっと高く感じてしまう。
 ここには、もと、小河内という集落があったが、ダムの完成により、945戸の家が水底に沈んだ。この補償問題で、小河内集落の人々と、当時の東京市は、大いにもめたという。

 「奥多摩 水と緑のふれあい館」に行ってみた。ここには、ずいぶん前に訪れたことがある。4年くらい前に建て替えられ、きれいになった。新しくなってからのふれあい館には、行ったことがなく、今回、初めて訪ねる。
 以前の資料館では、ダムが完成したことにより、水没してしまった地域についての展示が多かった。「小河内集落の人々の犠牲により、東京に水道水を提供できるようになったのです。私たちは、決してそのことを忘れてはなりません。」という解説があった、と記憶している。
 私は、東京都水道局がそういった展示をしていることに、感銘を受けた。フェアな態度であると感じた。が、資料館が新しくなってからは、水没した小河内集落のことには、あまり触れられていない。
 こうして、歴史は過去のものになっていくのだな、と思った。


小河内ダム


リンク
奥多摩 水と緑のふれあい館
東京都水道局
奥多摩観光協会



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