国道40号線  −その3−

 旭川から、国道40号線に入った。
 昨夜は、苫小牧フェリーターミナルに、夜8時すぎに着いてから、さて、どうしたものか、と思ったが、15キロメートルほど離れた早来町(はやきたちょう)にある、「ときわキャンプ場」に行った。きれいな芝生の、すばらしいキャンプ場であった。利用しているのは、私ともうひとりのオートバイ乗りの、2人だけであった。

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早来町公式ページ
旭川市公式ページ


 国道40号線は、旭川市を起点とし、稚内市を終点とする、全長243.0キロメートルの路線である。通称、名寄国道とか稚内国道というように呼ばれている。この○○国道という言い方は、北海道独特である。他にも、大雪国道とか、ナウマン国道とか、いろいろある。内地であれば、○○街道というのが普通だ。北海道の歴史が、まだ新しいことを示している。

 ところで、オートバイの調子が悪い。
 昨日、高速道路から降りたとき、エンジンが止まった。チョークを引いたり、アイドリングスクリューを回したり、いろいろやってもエンジンはかからなかった。覚悟を決めて、ギアをセカンドに入れ、“押しがけ”をして、やっとかかった。バッテリーが弱っているわけではなかったから、結構、やっかいなトラブルであろう。旅の始めから、うっとうしいことになったな、とは思っていた。
 いまは、排気口から白い煙が、もくもくと出ている。エンジンオイルが燃えているのだ。どうやら、ピストンリングがいってしまったようだ。とまって排気口をみると、燃え切らなかったオイルが、べっとりと付いている。
 夏のあいだ、ずっとオートバイに乗っていなくて、急に長距離を走ったのが、まずかったのだろう。機械というものは、毎日使っていると、そんなに悪くならない。使わなければ、もちろん悪くならない。たまにしか使わないというのが、一番よくないのだ。
 タクシーなどは、50万キロメートルから60万キロメートルも走るという。毎日乗っていれば悪くならないし、悪くなっても、すぐにわかるものだ。

 すぐに修理すべきなのだが、どこへ持って行ったとしても、どうせ、なおりはしない。現代のオートバイの修理というのは、要するに部品交換だ。部品を取り寄せなければ、なおらないし、いまどきのバイク屋は、部品の流通在庫を減らすため、ネジ1本たりとも置いていない。ホンダの部品センターから、部品を取り寄せて届くまでのあいだ、修理にとりかかることはできないのである。
 それに、ピストンリングの交換というと、シリンダヘッドを外さなければならない。修理を依頼したとしたら、料金はおそらく数万円を超えるだろう。しかも、そこまでやっても、直るとは限らないのである。私はエンジンオイルをつぎ足しながら、だましだまし走って、様子をみることにした。
 ホーマックという、北海道一円に展開するDIY店で、エンジンオイルの1リットル缶を買う。1リットルもあれば、大丈夫だろう、と考えたのだが、これは、あとで考えが甘かったことを思い知らされることになる。

 エンジンに負担をかけないように、まわすのは毎分4000回転までとし、トップギアで時速60キロメートルで走ることにした。毎分4000回転という数字に根拠はない。ま、そんなもんだろう、という勘にすぎない。
 白い煙がもうもうと上がるのは、「自分はいま、2ストロークのオートバイに乗っているのだ。」と思うことにした。なあに。カワサキのマッハ500SSにくらべれば、ましな方だ。

注)カワサキ マッハ500SS
1969年発売。2ストローク3気筒エンジンで、猛烈な白煙があがるので、「煙幕」と怖れられた。

 時速60キロメートルで走っていると、オートバイはもちろん、乗用車から軽トラック、ダンプカー、しまいには牛乳を満載したタンク車にまで、ありとあらゆるクルマに抜かれた。やっと、念願の北海道に来たのに、こんな走りしか出来ないとは、情けなくて、ふと涙が出そうになった。


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