国道241号線・国道38号線・国道237号線  −その2−


  国設和琴半島キャンプ場に着いたときは、すっかり暗くなっていた。私は、ヘッドランプをたよりにテントを張り、シュラフをひろげて、すぐに寝ることができるように準備してから、近くにある露天風呂まで、歩いて行った。屈斜路湖の近くには、無料で利用できる露天風呂が、いくつかある。ここ和琴半島にも、そのひとつがあるのだ。
 脱衣場で服を脱いで、入っていく。照明は裸電球が1個しかないので、とても暗い。すでに、何人かの人が入っている。けれども、どんな人が入っているのか、全くわからなかった。
 私は、暗いお湯のなかに、慎重に片足ずつ入れて入った。だが、露天風呂は思いのほか深く、足が底に着いたときに、ちょっとよろけてしまった。「おっとっと。」と、思わず声が出てしまう。そばにいた子供が、じっと私の方を見ている。

「ははは。結構、深いね。」

と、てれ隠しに笑いながら、話しかけた。けれども、その子は、黙ったままだ。愛想の悪い子だな、と思った。すると、その子の近くにいた大人が、

「こっちの方が浅いのよ。」

と言って、私が入っていたのと反対がわを、指さした。その声の主が女性だったので、ちょっと慌ててしまった。やや年配の方とはいえ、まさか、女性が入っているとは思わなかったのだ。

「あ...、そうなんですか...。どうもありがとうございます。」

と言って、私はその年配の女性に従い、指示された方に行った。無言のままでいると、なんとなく、緊張してしまう。私は、

「どうも、こんばんは。ちょっと熱いお湯ですねえ。」

と言って、改めて挨拶をした。すると、

「これくらいで熱いって言ってたら、どこの温泉にも入れないわよ(笑)。」

と言って、豪快に笑われてしまった。

 無愛想だな、と思った子供も、じつは女の子であることがわかった。といっても、からだの特徴を見たわけではなく、「おねえちゃん」と呼ばれていたから、わかったのだが。要するに、おばあちゃんと孫娘という関係らしい。幼い女の子ではなくて、大きな子だったので、ちょっとびっくりしてしまった。
 要するに、この露天風呂は、混浴なのであった。混浴の温泉に入るのは、初めてではない。けれど、本当に女の人といっしょに入るのは、初めてである。
 なんだか、落ち着かない感じで、入浴を終えた。女性といっしょに入浴というのは、男性だけで入浴するのとくらべて、ずっと気をつかってしまうものだな、と思った。



 キャンプ場まで歩いて帰ると、クルマに乗った若いカップルが、クルマに乗ったまま、窓をあけて、私に話しかけてきた。

カップル男「すみません。露天風呂に行ったんですか?」
私      「はい、そうですけど。」
カップル男「どこにあるんですか。」

私は、露天風呂までの道順を説明した。そして、

私      「でも、男女いっしょといいますか、混浴といいますか...なんですけど。」
カップル男「え! そうなんですか。」
私      「ええ。まあ、そうなんです。」
カップル女「女性の方も入っておられましたか?」
私      「ええ、女性といいますか、年配のお嬢さんといいますか、ですけど。」
カップル女「私でも、入れそうな雰囲気でしょうか。(笑)」
私      「いやあ、どうなんでしょうねえ(笑)。」
カップル男「どうもすいませんでした。」

 若いカップルは、そう言ってから、露天風呂に向かった。戻って来なかったから、女性もいっしょに入ったのかもしれない。


  
和琴半島の地図をみる


リンク
弟子屈町公式ページ (露天風呂などのガイドマップあり)
くっしーねっと (屈斜路周辺情報や旅の計画に役立つおすすめ情報を紹介)



つづきつづきを読む     インデックスに戻る   ホームへホームに戻る

inserted by FC2 system