国道254号線  −その3−


 荒船山が見える。かたちが荒海を行く船に見えることから、その名がついたという。
 富岡付近から見る荒船山の頂上台地は、ほんとに真っ平らに見える。特異な地形から、石灰岩が侵食されたのかな、とずっと思っていたのだが、じつは火山なのであった。
 船尾にあたる「艫岩(ともいわ)」は、噴火でふきとばされたあとが、高さ150メートルの断崖となっている。この断崖は、国道254号線からよく見える。

 内山峠を越える。
 久しぶりに来たが、道が見違えるほど改良され、通りやすくなっていた。ハーフループ状の橋が連続している。オートバイでカーブをまわるには、車体を傾けなければならない。そこがオートバイの運転の難しさであり、楽しさであるのだが、ここのカーブは大きすぎず小さすぎず、ちょうどいい半径でまわっているので、走っていて楽しい。
 新道の最高地点は、内山トンネルの中である。「標高947メートル」という看板が、トンネルの天井からぶら下がっていた。
 内山峠の佐久がわは、ずっと直線が連続した下りである。「コスモス街道」とよばれ、秋には道の両わきに、ずっとコスモスが咲いている。勾配をおりきったところが佐久市である。JR小海線中込(なかごみ)駅の近くを、踏切で越えた。

 荒船山の地図をみる

 内山峠の地図をみる

 下仁田町公式ページへのリンク
 佐久市公式ページ


 ここでちょっと寄り道をすることにした。大学時代の友人が、小諸高原美術館の職員をしている。「そのうちに見に行くから。」と言ったきり、ずっと延び延びになっていたのだ。
 小諸高原美術館は、その名前のとおり、小諸市街から少し山の中に入ったところにある。環境がいいとも言えるのだが、不便なところにある、といえなくもない。建物そのものは、南向きの日当たりのいい斜面の途中にある、瀟洒なものであった。展示は、洋画と日本画が半々くらい。展示の方針を決めるのも、彼の仕事のひとつである。
 ひととおり見学させてもらったあと、応接室に招かれ、少し話をする。美術館の運営というのは、画家の先生に気をつかうし、他の美術館との折衝ごとも多く、なかなか大変なようだ。

 小諸高原美術館へのリンク
 小諸市観光協会へのリンク
 信州農山村ふるさと運動推進協議会へのリンク


 友人と別れ、しなの鉄道の小諸駅に行く。
 しなの鉄道は、北陸新幹線(通称:長野新幹線)の開業に伴い、1997年10月1日に誕生した第三セクター鉄道である。旧信越本線の軽井沢〜篠ノ井間を引き継いだもので、整備新幹線の開業によって、JRからの在来線を引き継ぐ鉄道としては、全国で初めてのケースである。
 フル規格の新幹線が開業した場合、並行する在来線は赤字が拡大することが予想される。そのため、JRの経営から分離し、第三セクターで運営することになっている。要するに、JRグループとして、「フル規格の新幹線建設は、もう勘弁してください。やるならミニ新幹線にしてくださいよ。」と言っているも同然である。そのため、奥羽本線(山形新幹線)、および田沢湖線(秋田新幹線)は、ミニ新幹線を選択した。
 長野県も、当然のことながら、そのように望んだはずだ。そもそも運輸省の方針は、碓氷峠という大きなネックがある軽井沢まではフル規格で建設し、軽井沢より先はミニ新幹線であった。しかしながら、「長野オリンピックの開催も決まったことだし、長野まではフル規格で作ろう。」という政府首脳の一声で、一気に計画変更となった。海外からのお客さんに対して、日本国として、見栄をはったのだといえる。
 そういうことだから、私は信越本線については、並行在来線の第三セクター化の規定を免除してもいいのではないか、と思っていた。
 ところが長野県は、規則は規則だから、自分たちだけ特別扱いというのは性に合わない、とばかりに、さっさと第三セクター化を受け入れてしまった。

 このあたりに、長野県の県民性を感じる。よく言えば、真面目で清潔。悪く言えば、淡白なのである。JR東日本としても、さぞや面食らっただろうな、と思う。
 こうして、日本最長の第三セクター鉄道が誕生した。
 しなの鉄道の業績は、平成11(1999)年度において、当期損失は6億6千6百万円。累積赤字は17億4千8百万円となっている。平成12(2000)年度末には、資本金と同程度の23億円弱にまで達する見込み。それ以降は債務超過となり、民間企業でいえば倒産状態となる。
 なお、フル規格化の効果であるが、ミニ新幹線を選択した場合とくらべて、軽井沢〜長野間の所要時間短縮効果は、おそらく20分を下まわっている。

 いろいろと考えさせられることの多い、長野新幹線としなの鉄道の関係であるが、私が小諸駅に来たのは、そういったこととは全く関係がない。残り少なくなってしまった、長野色塗装(白+ターコイズ+青)の電車を見に来ただけである。
 しかしながら、12:55発の長野行きと13:06着の小諸止まりの列車は、いずれも赤地に白の、しなの鉄道オリジナル塗色であった。残念である。

 浅間山がきれいに見えている。友人に言わせると、浅間山は御代田(みよた)あたりから見るのが、一番いいのだそうだ。ここ、小諸から見ても、なかなかいいように思うのだが。

 しなの鉄道へのリンク
 


つづきつづきを読む     インデックスに戻る   ホームへホームに戻る

inserted by FC2 system