国道13号線(3)


秋田〜米沢

 秋田から、国道13号線にはいる。むかしの羽州街道だ。
 秋田市街を出ると、とたんにクルマが少なくなり、一人で走ることになった。時速70キロメートルくらいのペースで走る。取締りがあっても、ぎりぎり捕まらない速度だ。走っているうちに、また雨になった。どうやら、雨雲を追いかけて走っているらしい。どうもいけない。レインウェアを着こみ、大曲、横手とたどっていく。
 どの町もひっそりと静まりかえっている。が、湯沢という町だけは、店が開いていて、人どおりがあった。なにやら風俗っぽい店まである。地図をひらいてみると、湯沢温泉が近くにあった。
 もう午後11時すぎだ。夜通し走って、どこか適当なところで休憩するつもりであった。山形あたりまでいけば、深夜営業の健康ランドか喫茶店でもあるだろう、と思っていたが、だんだん眠くなってきてしまった。
 小野小町の出身地という伝説で有名な、雄勝(おがち)町というところに、道の駅があった。たいがいの道の駅は、深夜、休憩所が閉鎖される。が、ここ「道の駅雄勝」では、休憩施設が開いていた。たくさんのチャリダーたちが、ごろ寝をしている。私も仲間に入れてもらうことにしよう。荷物をおろして、寝袋をとり出す。なかにもぐりこむと、すぐに眠ってしまった。

 朝、5時に目覚めた。こういうところで一夜をすごす者の鉄則として、けっして、一般の利用者に迷惑をかけてはならぬ。チャリダーたちも、もう出発の準備を整えている。5時間あまり眠って、すっかり元気になった。
 外はあいかわらずの雨だ。自転車で旅行している時の私は、雨の日は走らない主義だった。オートバイであっても、できれば走りたくない。が、今日中に東京に戻らなければならない。走らなければならない。カッパを着て、エンジンをかける。
 すぐに雄勝トンネルをくぐり、山形県にはいる。及位(のぞき)という駅がある。ふつうは、読めないだろう。
 真室川町への分岐点を通過する。「真室川音頭」で名高いところだ。こんなところにあったのか、と思うほど、なんにもないところだ。
 新庄は、最上川の舟下りで有名だ。芭蕉も「五月雨をあつめてはやし最上川」と詠んだ。が、街のなかを最上川が流れているわけではない。市街地から西へ6キロメートルほどいったところが、舟下りの乗り場だ。ツバメのマークをつけたJRバスと、よくすれちがう。はて、こんなところに、JRバスの路線があったかな、と思う。
 天童は、将棋の駒などの木工製品で有名だ。わが家の居間には、新婚時代に買った天童産の椅子セットが、だいぶくたびれたものの、まだある。
 山形は、ぶどう、桃、サクランボ、紅花が名物だ。国道ぞいに、ぶどうを直売している店がめだつ。が、雨が降っているので、立ち寄るのがめんどうくさく、そのまま通りすぎる。上山(かみのやま)市というところで、4回目のガスチャージをした。

 羽前中山という駅で、小休止をする。待合室には、「山形から新庄間、新幹線の工事を行っており、代行バスによる運行を行っています」というポスターが貼ってあった。新庄をすぎてから、JRバスとさかんにすれ違うのは、そのせいなのだった。うっかりしていた。
 在来線と新幹線の共用区間、いわゆるミニ新幹線とは、要するにレールの間隔をひろげただけである。軌間1435ミリの新幹線車両が走ることができるから、乗りかえることなく、目的地に行くことができる。ただし、時間短縮の効果はほとんどない。福島から新庄くらいの距離では、30分も違わないはずだ。
 それだけの時間を節約するために、大金をかけて、レールの間隔をひろげる必要があるのか、とも思う。が、1067ミリメートルの狭軌よりも、1435ミリメートルの標準軌の方が、限界速度、あるいは輸送力の面で、メリットが大きいことはたしかである。個人的には、ミニ新幹線建設の名目で、主要幹線が標準軌とされていくことは、いいことだとおもう。
 待合室で、缶コーヒーを飲んでいると、上りのつばさが通過していった。こんな田舎の駅には不釣り合いなほど巨大な車両が、カンカンと鳴る粗末な踏切を通りすぎていった。


リンク
湯沢市公式サイト
雄勝町公式サイト
真室川町公式サイト
天童市公式サイトへ


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