国道56号線  −その2−

 鏡川を渡る鏡川橋というところで、国道が大きくクランク状にまがっている。土佐電鉄も仲良く付き合って、曲がっていた。車軸間距離の短い路面電車とはいえ、急カーブを曲がらなければならないから大変だ。ほとんど最徐行で、車輪をきしませながらまわっていた。JR土讃線の朝倉駅前を左折して、国道56号線に入る。
 国道56号線は、高知市から松山市にいたる、総距離295.7キロメートルの路線である。おもな経由地は、須崎市、宿毛市、宇和島市、伊予市などだ。
 土佐市に入ったところで県道に入る。そして、宇佐大橋をわたった。ここから「横浪三里」を走る。横浪三里とは、東西に細長く伸びた横浪半島の、南がわが太平洋、北がわが浦の内湾となっている。半島の尾根を県道(横浪黒潮ライン)が走っており、左右どちらを見ても海、という状況が、約12キロメートルも続いている。
 片岡義男の「メインテーマ」という小説に、ここが登場する。もっとも、主人公の乗り物は、ダットサンのピックアップトラックであったが。
 ここは宇佐町である。「ようこそUSAへ」という看板がたくさん立っている。USAと宇佐(うさ)のシャレである。ひとつだけならユーモアなのだが、たくさん立っているので、ちょっとしつこい。
 さすがは南国、高知である。海は青く、木々の緑は濃い。光の量そのものが、東京などより、ずっと多い感じがする。そのような風景のなかをオートバイで走っていると、仕事の約束をすっぽかしたことなど、もう、どうでもよくなっていた。


  
横浪三里の地図をみる


横浪三里にて


 須崎(すさき)市で、国道56号線にもどる。
 須崎市は、近年、特別天然記念物であるニホンカワウソがいることで、有名になった。カワウソは、きれいな川にしか棲めない。また、毛皮をねらって乱獲したため、ほとんど絶滅状態で、幻の動物といわれていた。が、近年になり、須崎市内の新荘川に、ごくわずかの個体が生息しているのが確認されたとのことである。

リンク
須崎市公式ページ


 土佐久礼(とさくれ)という町を通る。鰹の一本釣りで有名な町で、ビッグコミックに連載されていた「土佐の一本釣り」の舞台となった町である。町のなかを走っているだけで、カツオブシの臭いがぷーんとしてくる。
 そういえば、ふるさと創生1億円で、「黄金カツオ像」なるものをつくったのが高知県であったな、と思い出す。高知の人にとって、カツオは特別な魚なのであろう。
 それにしても、1億円の黄金カツオ像とは...。やることが豪快である。他に使いみちがなかったのか、とも思う。けれども、変なものを購入したり、必要もないものを建設したりするよりは、金で持っている方が、よほどいい。いざというときのための蓄えにもなる。一見、バカバカしいように見えるけど、じつは実質的な考え方なのかもしれない。
 その黄金カツオ像であるが、盗まれてしまったとか、ちょっと前にTVのニュースで言っていたことを思い出した。無事に戻ってきたのであろうか。

 土佐久礼から、峠越えになる。土佐久礼は、海沿いの町であるが、約4キロメートルの距離で、標高293メートルまで一気に登る。南国の明るい海沿いという区間が長かったのに、急に山深いところに入ってしまうので、少し驚く。
 峠を越えてしばらく行くと、窪川の町に入る。
 窪川は、四万十川の中流にある町だ。山あいにあるので、寒暖の差が激しく、よく霧が発生するところであるらしい。
 この町にある蔵元で、文本酒造という会社が、「桃太郎」という変わった名前の日本酒をつくっている。初めてこのお酒を見たとき、「岡山県の酒かな。」と思ってラベルを見た。すると、なぜか窪川であったので、私にとっては強く印象に残っているのだ。いい日本酒ができるところは、水がいいところである。桃太郎は、四万十川の伏流水を使っているのだそうだ。

リンク
文本酒造
窪川町公式ページ

 


つづきを読む     インデックスに戻る   ホームへホームに戻る

inserted by FC2 system