国道411号線  −その2−


 御嶽(みたけ)駅を通る。この駅の近くから、御岳山(みたけさん)に向かってケーブルカーが出ている。駅の名前は「御嶽」、山の名前は「御岳」である。東京に住む人にとっては、高尾山とならんで、よくハイキングに来るところだ。
 橋の下に、カヌーの練習場がある。スラロームをするためのポールもあり、なんとなく、オートバイの教習コースを連想してしまう。せっかくカヌーを買ったのなら、こんな狭いところじゃなくて、もっと広いところで漕げばいいのに、と思う。
 それに、静水面でふつうにカヌーに乗って遊ぶ、あるいは、ゆるやかな川を、上流から下流に漕ぎ下りながら旅をする、といったカヌーの使い方で、急流をスラロームするような技術まで、身につける必要があるのだろうか。

 日本では、スポーツや運転などといった技術的なことを教える場合、どうもオーバースペックというか、よけいなことまで教えたがる傾向があると思う。
 オートバイの教習所が、いい例であろう。私は30代前半に、限定解除をするために、オートバイのライディングスクールに通った。おかげで私は、教習コースで教わるような「小ワザ」については、かなりウデを上げた。
 私は、750CCのオートバイで、一本橋を20秒以上かけて渡ることができるし、ギアをサードに入れて、スラロームをすることもできる。けれども、そういった技術が、一般公道を走行するうえで役に立った、という経験は、ただの一度もない。
 いくら高度な技術を持っているやつだって、事故を起こすやつはいる。逆に、未熟であっても、事故を起こさないやつは、決して起こさない。事故を起こすか、起こさないか。それは、主として、「想像力の問題」だ。それを技術の問題にすりかえるから、よけいなことまで教える傾向があるのだと思う。

注)限定解除
 「排気量400CCまでに限る」という、運転免許の限定条件を解除するという意味。当時は、排気量400ccを超えるオートバイに乗るためには、運転免許試験場で、20人のうち1人通るかどうかという、厳しい試験に合格する必要があった。私は府中の運転免許試験場に通い、7回めの受験で、やっと合格することが出来た。教習所で大型二輪免許が取得できるようになった現在、あの努力は、いったいなんだったんだろう、と思う。


 さらに、多摩川のきざんだ、深い谷に沿ってすすむ。
 奥多摩駅は、木造二階建ての山小屋風の駅舎で、青梅線の前身である奥多摩鉄道開業以来の建物である。以前は、もっと古色蒼然といったたたずまいであったが、自動改札機が導入されてから、雰囲気が変わってしまった。私の子供の頃は、この駅の名は「氷川」といった。いつごろ改名されたのかは、わからない。
 このあたりは、石灰石の産地である。かつて、JR青梅線では、石灰石を運び出すための、長い貨物列車を見ることが多かった。石灰石を掘り出しているのは、奥多摩工業という会社で、この駅から、青梅線、南武線を通って、京浜工業地帯の浜川崎まで運ばれていたのだ。そこには、セメントの大工場(もとは浅野セメントの川崎工場。現在は第一セメント株式会社)があり、そこでセメントに加工されるのであった。現在では、石灰石を運び出す貨物列車は、すべて廃止されている。奥多摩駅の、石灰石の積み出し設備も撤去され、駐車場となっている。

 2万5000分の1地形図をみると、奥多摩駅の北側から、「奥多摩工業曳鉄線」という鉄道が掲載されている。曳鉄線とは、ケーブルでトロッコを牽引するような感じである。日原(にっぱら)の近くの鉱床から掘り出した石灰石を、奥多摩駅まで運び出すための施設だ。青梅線の貨物列車が廃止された現在、使われているのかどうか、よくわからない。
 この曳鉄線は、ほとんどがトンネルのなかである。しかし、地図でみると、ところどころで橋梁をわたっているから、注意深く探せば、見つけることができるだろうと思う。


  
奥多摩工業曳鉄線の地図をみる


リンク
時刻表にない鉄道  (「二邑亭駄菓子のよろず話」 二邑亭駄菓子(にゆうていだがし)さんのページ
奥多摩工業株式会社
奥多摩町公式ページ




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