国道411号線  −その1−


 遠くに行くばかりが、旅ではない。
 旅の楽しさとは、非日常的な体験をすることにある。そのためには、ふだん生活をしているところから、なるべく離れた方がいいことはいうまでもない。その方が、ふだん生活をしているところとは、全く異なる風俗、文化に接することができる可能性が高いからである。そのことは、海外旅行を思い起こしていただければ、すぐに理解していただけるだろう。

 しかしながら、現代人にとっては、いつも自由に遠くに行けるわけではない。なぜならば、帰ってこなければならないからである。
 学生であっても、社会人であっても、生活をしている以上、人は、必ず帰ってこなければならない。完全に帰る場所のない、根なし草のような人もいるかもしれないが、数としては少ないだろう。
 そして、生活をしている以上、必ず予定というものがある。現代社会において、生きるということは、予定を守るということである。生活をしている以上、その予定を大きく逸脱するわけにはいかない。
 必ず帰ってこなければならないこと。そして、予定を守らなければならないこと。この2つの制約により、多くの人にとって、遠くまで行く旅というのは、年に何回もできるわけではないだろう。私にとっても、全く同じである。

 旅とは、時間の使い方を変えることである。心の状態を変えるのだと言ってもよい。だから、なにも遠くに行かなくても、旅をすることはできる。日帰りとか、半日くらいであっても、都会から離れ、自然の多いところに行けば、時間の使い方、心の状態を変えることは可能だろう。
 私の住んでいる立川市は、東京都の西のはずれにある。したがって、奥多摩が近い。朝おそく起きて、今日は天気がいいから、ちょっと出かけてみようか、というような場合、奥多摩は、まことに都合のいい場所なのである。
 ということで、私にとって奥多摩は、じつに頻繁に出かける場所となっている。

 2002年11月27日水曜日。私は休暇を取った。そして、朝起きたら、天気が良かった。そこで、オートバイで走りに行くことにした。こういう場合、私の行き先は、ほとんど奥多摩である。

 自宅を午前10時ごろ、自宅をスタートする。
 奥多摩への入り方は、いくつかのルートがあるが、私の住んでいる立川市からは、五日市街道か、青梅(おうめ)街道を通っていくのが普通である。青梅街道は、青梅市内で国道411号線となる。この道は、八王子市内を起点として、青梅市、奥多摩町、山梨県の丹波山村(たばやまむら)、塩山市などを経由し、甲府にいたる118.7キロメートルの路線である。最高地点は、柳沢峠の1472メートル。東京から近いわりには、関東でも有数の山岳路線である。

 青梅市内は、住宅の開発がすすみ、ショッピングセンター、外食産業などが目白押しとなっている。が、青梅をすぎると、とたんに山の中という雰囲気となり、多摩川がきざんだ深い谷に沿ってすすむ。
 並行して、JRの青梅線が走っている。東京に住んでいる者にとっては、河辺(かべ)か青梅あたりが、都心に通勤する限界であり、そこから先は山のなか、という感じである。じっさい、青梅から先は、列車の本数もぐっと少なくなり、しかも単線である。無人駅も、たくさんある。東京寄りから順にあげると、宮ノ平(みやのひら)、日向和田(ひなたわだ)、石神前、軍畑(いくさばた)、沢井、川井、白丸(しろまる)の7つが、無人駅だ。

 沢井という集落を通過する。東京都西部、とりわけ多摩川の流域は、湧き水の豊富なところで、いくつかの酒造がある。ここにある小澤酒造さん(「澤乃井」をつくっている)は、そのなかでも、有名どころのひとつである。

リンク
小澤酒造さん
青梅市公式ページ




国道411号線  (白地図著作権:「白い地図工房」


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