国道361号線  −その1−


 塩尻に住んでいる友人から、「国道361号線の権兵衛峠がいいよ。もうすぐ新しいトンネルが出来てしまうから、行くなら今のうちだよ。」というメールをもらった。
 権兵衛峠。初めて聞く名前だ。なんとなく、ユーモラスな名前である。地図で、峠の位置を確認する。この国道、分断されていたり、並行する林道を暫定的に国道として使っていたりして、なかなか面白い。私はアドバイスに対するお礼を言って、「そのうち、行ってみるよ。」と返事をしておいた。

 国道361号線は、長野県の高遠町(たかとおまち)から岐阜県の高山市にいたる、全長131.4キロメートルの路線である。途中、権兵衛峠のほか、姥神峠(うばがみとうげ)、地蔵峠、長峰峠、美女峠という、5つの峠を越える。長野県も岐阜県も、山深いところである。
 起点である高遠町のコヒガンザクラは、有名である。私は、かねてから、サクラの開花時期に訪れてみたいと思っていた。あたたかくなったら、高遠町で花見をしたあと、権兵衛峠を越えてみようと思う。

 2003年4月27日土曜日、私は、中央自動車道を、西に向かっていた。天気予報では、曇りのち晴れであったが、上野原を過ぎたあたりから、雨が降ってきた。レインウェアを着込んでの走行である。オートバイにとって、雨の日は、あまり走りたくないものだ。けれども降ってくるのだから、仕方がない。
 私は、長野方面に向かうときはいつも、八王子インターチェンジから勝沼インターチェンジまで、中央自動車道を利用する。そして、勝沼から先は、国道20号線を走ることにしている。理由は、八王子から勝沼までの国道20号線は、走りにくいし、危険を感じることがあるからだ。
 この区間には、大垂水峠、笹子峠という2つの峠があるし、道が狭く、見通しの悪いカーブが多い。しかも、路面の水はけが悪いから、雨のときは、よくスリップする。だから、この区間に関しては、高速を使う方が賢明である。雨の日は、なおさらだ。

 勝沼から先の国道20号線は、それまでとはうって変わって、いい道になる。甲府昭和までは、ほぼ片側2車線。そこから先は、片側1車線であるが、信号がぐっと減って快適に走れる。だから、八王子インターチェンジ〜勝沼インターチェンジ間だけ、中央自動車道を利用し、あとは国道20号線をひたすら走れば、諏訪までの所要時間は、1時間も違わない。
 高速道路通行料金の節約にもなる。オートバイを含む軽自動車の高速料金は、八王子インターチェンジから勝沼インターチェンジまでが1500円、諏訪インターチェンジまでが2950円で、その差は1450円。
 つまり、1時間に満たない時間を、1450円で買うかどうか、という選択になる。なにか、重要な使命とか、目的があって出かけるのならば、私だって高速道路を利用する。けれども、私の旅には、重要な使命とか目的などない。
 今回の旅だって、主な目的は、国道361号線を走って権兵衛峠を見に行くという、それだけのことだ。1時間に満たない時間を1450円で買うよりも、そのぶん、ガソリン代か食費にまわした方がいいだろう。

 勝沼をすぎると、雨はやんだ。さすがに山梨県のこのあたりは、日本一の日照時間をほこる地域だ。茅野から国道152号線に入り、杖突峠(つえつきとうげ)を越える。そして、10キロメートルほど、南に走ると、高遠町の市街に着いた。

注:ここでクイズである。高速道路にはいろいろな路線があるが、その多くは、中央自動車道のように、「○○自動車道」という名称が付いている。地図上で高速道路という名称が付いているのは、東名高速道路、名神高速道路の2路線だけである。では、「自動車道」と「高速道路」は、どのように違うのか。 (クイズの正解は、最後に記す)



国道361号線  (白地図著作権:「白い地図工房」

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