国道311号線 Part2  −その1−


 2004年11月8日、私は奈良県の下北山村(しもきたやまむら)で、キャンプをしていた。
 私が利用したのは、下北山スポーツ公園のなかにあるキャンプ場である。この公園は、池原ダム(いけはらだむ)の下流の河川敷を利用したところで、キャンプ場のほか、パターゴルフ場、グラウンド、テニスコート、レストラン、ロッジなど、さまざまな施設がある。山深いところにあるわりには、充実した施設である。
 ここのキャンプ場は、通年営業をしているし、芝生のサイトで、とても広々としている。利用料金は、たしか500円くらいだった。すぐ近くには、やはり500円くらいで入れる温泉施設もある。とても居心地のいいところなので、しばらく滞在してもいいと思う。

 私は、午後9時ごろまで、温泉につかってから、テントにもどった。
 東京に住んでいる人間にとって、山奥のキャンプ場で夜を迎えるとき、まず驚くのは、その星の多さであろう。空気が澄んでいるし、街の照明が空気に乱反射しないから、空が暗い。だから、見える星の数が全然ちがうのだ。
 東京の多摩地区の空では、最近では、3等星も見えづらい。けれども、深い山奥であれば、普通の人は5等星まで、すこし訓練した人なら、6等星まで見ることができる。
 私は少し近視であり、しかも年齢的にみて、水晶体がだいぶ濁ってきているはずなのだが、それでも、このキャンプ場では5等星まで見ることができた。

 テントサイトは、池原ダムの真下である。私はダムと星空をみながら、寝っころがって、ビールをぐびっと飲んだ。ひさびさに、生きててよかった、と思った。

リンク
きなりの里(下北山スポーツ公園)
下北山村公式ページ



下北山スポーツ公園キャンプ場の星空と池原ダム


 あくる朝は、午前6時ごろ、起きた。テントから這い出すと、まずは巨大なダムの堤体が目に入った。高さは100メートル以上はありそうだ。夜だとそうでもないけれど、昼間、明るいところで見ると、圧倒的な迫力がある。なんだか、プレッシャーである。

 池原ダムは、アーチ式のダムだから、使っているコンクリートの量は、重力式のダムに比べると格段に少ない。両端に堅い岩盤があり、それで膨大な水圧を支えているのである。だから、もし大きな地震でも起きて、支えている岩盤が崩壊でもしたら、ダムは決壊する。もし決壊したら、こんなところにいたら、一発で流されてしまう。

 が、まあ、たぶん大丈夫なのだろう。

 ダムの下流の河川敷というのは、ふつうは放水して水を流すところだから、まず利用はされない。けれども、池原ダムは放水はしない。そもそも池原ダムには、放水用のゲートがないのである。だから、こんなふうにキャンプ場とか公園というように、河川敷がまるまる利用できる。ダムにしては、ちょっと変わった構造となっている。


テントサイトと池原ダムの堤体

池原ダム全景

 池原ダムの地図をみる


 テントをたたんで、出発する。
 とりあえず、池原ダムをよく見てみようと思って、山の斜面についている道を登って行った。「平成の森」というところから、ダムの全景をみることができた。池原ダムは、国内最大級のアーチ式ダムである。放水用のゲートがないぶん、すっきりとしており、美しい姿のダムということで有名だ。
 対岸には、もうひとつダムがあり、そこにはちゃんと放水のためのゲートが取り付けられている。Jパワー(電源開発株式会社)の池原発電所で、下流の七色ダムとのあいだで、揚水発電を行っている。出力は35万キロワットだ。
 ダム湖である池原湖では、バス釣りで有名である。私は釣りは好きだけど、バス釣りだけはやらない。できれば、ブラックバスの密放流は、やめてほしいものだと思っている。

リンク
Bass Stop! 北海道
日本釣振興会

※ブラックバスの密放流の影響について、詳しく述べられています。

※「外来魚コーナー」に、釣り業界としての見解が述べられています。



 池原ダムの堤体の上は、国道425号線が通っている。私は国道169号線から、そちらの方に入って行った。以前、国道425号線を走ったとき、下北山村から尾鷲のあいだを走ることが出来なかったので、その区間が未走となっていたのである。 (国道425号線 その6
 池原ダムをわたったところに、「尾鷲方面行き 落石のため、通行できません」という立て看板が置いてあった。立てられてから結構時間が経過しているうえ、「どの区間が」とか、「いつからいつまで」とか、そういった付帯情報は一切なしである。また、この看板を誰が立てたのかも書いていない。文句あるか、とでも言いたげであった。
 断っておくが、ここは国道なのである。国により管理された道路なのである。それが、誰が立てたかわからない看板により、こうもあっさりと「通れません」と宣言されてしまうと、正直、かちんとくる。

 ここからは、私の想像であるのだが、この立て看板を立てたのは、ダム関係の工事業者であると思う。ここから先には、池原発電所と坂本ダムがあり、そのメインテナンスのため、工事車両は頻繁に出入りする。けれども道幅が極端に狭いから、一般車に入って来られると、行き違いが出来なくて、仕事の支障になるのだろう。だから、「尾鷲には通り抜けできないよ。」と書いておくことにより、入ってくる一般車両を食い止めているのだと思われる。
 誰が立てたのか書いていないというのは、そういうことだろう。国道の管理者が立てたのなら、国土交通省なり、○○土木事務所なり、必ず名乗るはずだ。役所の仕事というものは、そういうものである。

 無視して行ってしまおうかな、とも思ったが、国道425号線の悪路ぶりは、前回通って、百も承知である。今年は台風がたくさん通り過ぎたことでもあり、本当に落石とか崩落箇所があったりすると危険だ。無理をせず、引き返すことにした。
 国道425号線を完走することは、今回、私が旅に出た理由のひとつだったのだが、あっさりとダメになってしまった。あきらめて、国道169号線を戻ることにする。


通行止めの看板



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