国道2号線 Part2  −その2−

 「菱重○○」という会社が多い。この近くに三菱重工業の大工場がある。鉄道車両やその部品をつくっているのだが、その関連会社群である。
 三原市を通過する。三原市のホームページを見ると、「陸・海・空をむすぶ街」というキャッチフレーズが掲げられている。「陸」は鉄道および高速道路、「海」は瀬戸内海の島々に向かうフェリーであることはわかる。では、「空」とはなにか。地図をみると、北西に約20キロメートルほど行ったところに、広島空港がある。三原駅から広島空港までは、路線バスで約33分だ。広島駅までは約48分かかるから、三原駅の方が近い。
 東京から広島まで行くことを考えると、新幹線「のぞみ」で3時間50分。飛行機なら約1時間のフライトだ。だが、都内から羽田までのアクセスと、広島空港から駅までのアクセスを考えたら、所要時間は大差ない。じつに、いい勝負をしている。
 これが福岡なら、飛行機の圧勝だ。福岡空港は市街地にも近いので、新幹線は全く勝負にならない。新幹線で行くか、飛行機で行くか。広島はその境界線上にある都市といえそうだ。

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三原市公式ページ


 三原から、だらだらとした登り坂が始まる。途中の本郷町は、旧山陽道の宿場町である。沼田川(ぬたがわ)に沿っており、沼田本郷の名であった。現在の本郷には、宿場町の面影はない。けれども、沼田川はきれいな、いい川だった。

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本郷町公式ページ


酒造の煙突群と赤い瓦屋根の町並み


 だらだらとした坂を登りつめたところが、東広島市である。
 東広島市などというような、漠然とした名前の市は、いくつかの町が合併してできた場合が多い。調べてみると、やはりそうで、西条町、八本松町、志和町、高屋町の4つの町が合併してできたのであった。
 いくつかの市町村が合併するということは、総務省が推進していることもあり、全国的にすすめられている。その方が、地方公務員の数を減らすことができ、合理化に結びつくからだ。そして、合併後は中心となる市町村の地名が残らず、新しい名前がつけられる。住民に対して、大きな市に吸収されたのではなく、合併により、新しい市が誕生したのだというイメージを持たせるためだろう。

 その新しい名前であるが、役所の考えることだから、斬新なものや、奇をてらったものは敬遠される。広島県トマト市、などというものは、最初から却下されるのだ。そのため、どうしても漠然としたものになる。東広島市などは、その典型であろう。

 最近、首都圏では、保谷(ほうや)市と田無(たなし)市が合併して西東京市に。大宮市、浦和市、与野市が合併して、さいたま市になった。地名は生きた歴史である。市町村の合併により、こういった地名が次々と生まれるのは、郷土史の自殺のように思えてならない。


なまこ壁の酒造倉庫群


 話がそれた。
 東広島市であるが、中心となる町は、山陽道26番目の宿場町、西条である。JRの駅名はいまだに西条であるが、JRが由緒正しい西条という地名の保存に熱心なのかというと、そうでもなさそうだ。6キロメートルほど南にある新幹線の新駅が「東広島」であるから、それと区別するため、西条のままにしているのであろう。
 その西条であるが、旧山陽道の宿場町であると同時に、酒造りの町として有名だ。兵庫の灘、京都の伏見とともに、3大銘醸地のひとつにあげられる。
 蔵元は、JR西条駅の周辺に集中している。山陽本線に乗って旅行していると、西条駅に入る直前に、レンガ造りの煙突が、たくさん見えてくる。西条を紹介するガイドブックやパンフレットには、このレンガ造りの煙突と赤い瓦屋根の家並みが、必ず載っている。


賀茂泉酒造さん ホームページ



 酒造のある古い町並みを歩いてみる。なまこ壁が、なんともいえず美しい。現在は、酒造りの季節ではないが、時期になると、醸造の香りが漂うのだろう。
 老舗のひとつ、賀茂泉酒造さんの前でオートバイを止め、写真を撮ろうとしていると、なかから社員の方が出てきた。道路に面しているとはいえ、私有地だから、許可を得たほうがいいだろう。

 「こんにちは。こちらの雰囲気がとてもいいものですから。おそれいりますが、写真をとらせていただいても、よろしいでしょうか。」

と言うと、その方は快く許可してくださったうえ、町のなかで、いい写真が撮れそうなポイントを、いくつか紹介してくださった。どうやらこの町の人々は、あたたかいようだ。
 現在の東広島市は、こういった古い街とともに、広島市から移転してきた広島大学、新しく造成された広島中央テクノポリスとともに、研究学園都市として発展しているようだ。


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東広島市公式サイト
広島県酒造組合連合会




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