国道2号線 Part2  −その1−

 あたたかくなってきた。そろそろ、どこか遠くに出かけたいな、と思う。
 地図を見ながら、どこに出かけようかと考える。走ってみたい国道は、たくさんあるけれど、いつ、どこに行くかは、私の場合、ほとんどが行き当たりばったりである。
 そんなことをしていると、TVのニュースで、山口県岩国市の錦帯橋が映された。なんとなく見入る。そのニュースでは、錦帯橋の架け替え工事が3年計画で行われていること。今年は5連あるアーチの真ん中が架け替えられ、つい先日完成したこと。そして、錦帯橋の周囲の公園では、いま、サクラが満開であること、などを伝えていた。最後に、山口県ローカルTV局のきれいな女子アナウンサーのおねえさんが、
「岩国錦帯橋のサクラは、いま、まさに見ごろです!」
と、力強く言って、締めくくった。それを見ていた私は、
「そうかそうか。じゃあ、行かなくっちゃな。」と思った。

 2002年4月1日正午、私は尾道駅前にいた。久しぶりの遠出である。
 昨年の夏、大阪から尾道まで走って、国道2号線の旅を中断した。今回は尾道から再開し、終点の下関まで走ろうと思う。
 サクラの名所、千光寺公園に行く。今年は、サクラの開花時期が平年よりも10日もはやい。ここでは、はやくも散りかけていた。千光寺に行って、尾道水道を眺める。川のように狭い水道に、たくさんの船が行き交っている。よく晴れているので、海は青かった。
 尾道はお寺の多いところで、大きなお寺の屋根がいくつも見える。平安時代から瀬戸内の良港として栄え、豪商たちが寺社仏閣の寄進造営をさかんに行ってきたのである。現在の尾道には、当時の繁栄を感じさせる活気はない。けれども、静かで落ち着いた、いい町である。

リンク
尾道市ホームページ


 午後1時ごろ、尾道を出発する。
 尾道から先は、左手に瀬戸内海を眺めながら走る。国道2号線というと、瀬戸内海沿いに走るというイメージを、つい持ってしまうが、実際には、ほとんどが山の中である。海沿いに走っている区間というと、ここ尾道付近と、兵庫県の須磨から明石にかけての区間、そして広島県の宮島付近の3ヶ所くらいである。
 糸崎という小さな駅を通る。この駅には、思い出がある。高校時代に修学旅行で、九州に行ったとき、夜行列車に乗っていて、ふと目をさますと、この駅に停車していたのだった。
 この小さな駅には、山陽本線の鉄道管理用の施設が集中している。それで、運転手が交代するため、多くの夜行列車が停車するのだ。私たちが乗った列車も、深夜3時ごろに停車した。そのガクンという衝撃で、私は目をさましたのであった。前に座っていた私の友人も目をさました。そして、

私 「糸崎だって。」
友人「糸崎ね...。いったい、どのあたりなんだろうなあ。」
私 「さあ...。でも、時刻からみて、広島の近くなんだろうなあ。」

などと話し合った。
 糸崎という駅名を聞いても、ほとんどの人にとっては、どこにあるのだか見当もつかないだろう。けれども、山陽本線を走るほとんどの夜行列車は、この駅に停車する。だから、九州方面に夜行列車で旅行したことのある人のなかには、同じような経験を持つ方も多いのではないかと思う。
 その糸崎とはどんな駅なのかと、通り過ぎるときにちらっとみる。薄茶色をしたモルタル造りの駅舎が見えた。小さいけれど、長い歴史を感じさせる、いい感じの駅であった。



国道2号線 (白地図著作権:「白い地図工房」)

 


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