国道220号線/国道448号線(1)


出発まで

 1994年4月28日木曜日の夕方、私は川崎から日本カーフェリー(現マリンエキスプレス)の船で、九州に向かっていた。今回は、南九州の宮崎から鹿児島にかけて走るつもりだ。

 その日の午後、私はスーツを着て、オートバイで仕事の取引先に向かった。打ち合わせが終わったら、その足で川崎のフェリーターミナルに向かうつもりであった。しかしながら、だらだらと時間が延び、船の出航時間がせまってくる。内心、ひやひやしていたが、
「これから九州行きの船に乗って、オートバイでツーリングをしてきますんで、これで失礼します。」
などとは、どんなに親しい取引先でも、言えるものではない。

 結局、打ち合わせが終わったのは、出航の1時間前だった。私は、大急ぎで駅のコインロッカーから荷物を取りだし、スーツの上からジャケットだけをはおって、首都高速横羽線を飛ばした。少し渋滞していたのであきらめかけたが、なんとか出航の10分前に川崎フェリーターミナルに着くことができた。乗船券を買って、私が乗り込むと同時に、ボーディングブリッジがはずされ、船は岸壁を離れた。
 
 冷や汗をぬぐいながら、2等船室に行くと、ほとんど満席状態。無理もない。明日からゴールデンウィークなのだから。
 家族連れもたくさんいる。2人の子供の父親として、家族をほうっておいて、こんなことをやっていていいのだろうか、という気もする。ま、仕事を抱えている以上、長い休みが取れるのは、時期的に限られてしまう。今回は勘弁してもらおう。
 連休前で、なにかと忙しくて疲れていた。私は船のレストランで夕食をとると、すぐに寝てしまった。


 目が醒めると、船は紀伊半島の沖を通過していた。この船、前回(国道265号線、1993年5月)とはちがって、新しくなった。速い。26ノットも出る。1ノットは、毎時1海里。1海里は1.8kmちょいだから、26ノットは約48km/時だ。1万トンクラスのフェリーとしては、日本最速である。
 と言われても、船に詳しくない人には、ピンと来ないかもしれない。普通の貨物船が15ノットくらい、豪華客船クイーンエリザベスの巡航速度が20ノットくらいといえば、この航路に就航しているフェニックスエキスプレス、パシフィックエキスプレスが、いかに速いかがわかるだろう。

注:ちなみに、前回私が乗った高千穂丸は、その後、大阪〜宮崎航路から神戸〜日向航路にまわされたが、現在の行方は、私にはわからない。高性能な船であったから、どこかの国の船会社に売却されて、外国の海をいまも走っているものと思われる。

 船は、室戸岬を通過した。このあたりでは、最近ホエールウォッチングが有名である。私は鯨がいないかどうか探してみたが、当然のことながら見ることはできなかった。もし見えたとしたら、大騒ぎになるだろう。かわりに、イルカがジャンプしているのが見えた。九州行きの航路で、イルカを見ることは、珍しいことではない。
 それにしても、何という美しい海なのだろう。水の色は、何ともいえない深い藍色で、プロペラーがかき分けた泡のところは、白が混ざって、本当に水色をしていた。これが本当の海の色なのだろう。私は、この海の色を、子供に見せなければ、と思った。東京湾のような茶色いインチキの海ばかり見せていてはいけない、と思った。

 オートバイ乗りの若い人たちは、昨夜は集まって楽しそうに話をしていた。私は年齢的に隔たりがあるので、挨拶はしたものの、その話の輪の中に入っていくことは、気恥ずかしくて出来なかった。が、今はみんな船酔いで、死んだように寝ている。
 船は、ほぼ定刻に、日向に着いた。国道10号、一ツ葉道路を南下して、その日は宮崎のビジネスホテルに泊まった。

    国道220号線/448号線   (白地図著作権:「白い地図工房」



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