国道197号線 Part1  −その1−


 2004年5月19日水曜日、午後9時。私は、はげしい雨のなか、横浜横須賀道路を走っていた。これから四国に行こうと思っている。四国に行こうとする者が、横須賀に向かっているのは変だと思われるかもしれない。が、これでいいのである。
 あいにく台風が接近しており、はげしい雨が降っている。しかも夜であるから、走りにくい。ヘルメットのシールドにかかる雨が、視界をさえぎる。また、雨水がたまって、道に描いてある白いラインが見えない。ラインが見えないと、目印になるものがないので、いったい、どこを走っていいのかわからない。
 こういう時は、クルマの後ろについて走るのが無難である。が、地元のクルマは、雨でラインが見えなくなるような道路でも、慣れているのか、時速100キロメートル以上で走っている。とてもではないが、ついていけない。

 クルマは容赦なく、私を追い越していく。追い越していくときに巻き上げる水が、ヘルメットのシールドにかかって、さらに前を見づらくする。なんだか、命がけという感じで走って、ようやく佐原インターチェンジに到着した。
 佐原インターチェンジからは、突き当たりの信号を左、2つめの信号を、久里浜と書いてある案内標識にしたがって、右へ。あとは、スムーズに久里浜のフェリーターミナルに着くことができた。
 今日は、ここからフェリーで、九州の大分に渡る。そして、大分から四国に渡ろうと考えている。

 久里浜港から大分までのフェリーが開業したのは、2004年4月17日。シャトルハイウェイラインという会社が運行を開始した。まだ開業して1ヶ月ほどしか経過していないので、ほとんど知られていない。が、料金も安いし、所要時間も約22時間と、フェリーとしては短いほうである。久里浜を深夜に出て大分に夜着くという、完全にトラッカー向けのダイヤなので、オートバイ乗りにとっては、ちょっと使いづらい。けれども、大分まで行けば、九州をまわるのに便利であるのはもちろん、船で四国に渡ることもできるし、山陰方面もちかい。利用価値は大きいと思う。

 私がフェリー乗り場に着くやいなや、オレンジ色のカッパを着て、ニンジン棒(夜間、警備員が持っているオレンジ色に光る棒)をもったおじさんが近寄ってきて、私の名前を確認した。出航まで30分以上もあるのだが、予約していた客で、まだ乗船していないのは、私だけであったようだ。
 乗船券を買うと、粗品としてタオルをもらってしまった。これまで、いろいろな船に乗ってきたけれど、粗品をもらったのは今回が初めてである。ボーディングブリッジを渡り、オートバイを車両甲板に乗せる。係員の人たちは、みんな親切であった。

 階段を上がって案内所に行き、ルーム・スチュワードのおじさんに乗船券を見せる。おじさんは、わざわざ部屋まで案内してくれた。お礼を言ってから部屋に入ると、まずは着替えた。びしょ濡れのからだをふいて、乾いた服を着たら、ようやく人心地ついた。

 私が乗ったのは、「しゃとるよこすか」であった。総トン数は11,274トン。航海速力は22.5ノット(時速42キロメートル)である。
出航の時刻になった。私は甲板に出て、作業を見学する。船尾にタグボートがはり付いた。タグボートを使わないと、狭い久里浜港では出ることができないのだろうか。
 ともかく、タグボートの助けを借りて、1万トン以上もある船が、狭い水面で器用に方向を変える。そうして、船首を港の出口に向けると、ゆっくりと加速して出ていった。それにしても、毎回毎回、こんな操船をするのは、大変だろうなあと思う。
 出航の様子を見たので、私は満足して船室に戻り、定員8人の広い部屋を独り占めして、ぐっすりとねむった。

リンク
シャトルハイウェイライン


国道197号線
  (白地図著作権:「白い地図工房」


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